子宮頸がんは、検診の有効性が確認されている数少ないがんのひとつです。
前がん病変の段階で見つけて適切に対応することで、がんへの進行を防げる可能性があります。
当院では、子宮頸がん検診から精密検査(コルポスコピー下組織生検)、前がん病変の評価、治療方針のご提案まで一貫して対応しています。

子宮体がんや卵巣がんを含め、婦人科がん全体について知りたい方は、こちらのページもご覧ください。

がん検診の本当の目的

がん検診の目的は、「がんを見つけること」ではなく、「命を守ること」です。

  • すべてのがんが「早期発見=必ず助かる」というわけではありません。
  • 進行が非常に速いがんでは、検診が間に合わないこともあります。
  • 進行が非常にゆっくりのがんでは、早期発見が必ずしも寿命延長に結びつかないこともあります。

そのため、検診の有効性は「発見率」ではなく「死亡率が減るかどうか」で評価されます。

【表:平成27年度のがん検診の実績】

がん検診 胃がん
(40~74歳)
大腸がん
(40~74歳)
肺がん
(40~74歳)
乳がん
(40~74歳)
子宮頸がん
(20~74歳)
検査方法 胃X線 便潜血 胸部X線 視触診および
マンモグラフィ
(マンモグラフィ
単独含む)
細胞診
受診者数 3,013,168 6,847,472 5,719,736 3,012,808 4,230,282
発見がん数
(%)
3,529
(0.12)
14,968
(0.22)
2,607
(0.05)
9,918
(0.33)
1,628
(0.04)
要精検者数
(%)
229,421
(7.6)
475,386
(6.9)
94,526
(1.7)
216,541
(7.2)
87,516
(2.1)
精検受診者数
(%)
187,498
(81.7)
333,172
(70.1)
78,943
(83.5)
191,112
(88.3)
65,109
(74.4)

出典:平成28年度地域保健・健康増進事業報告より

子宮頸がんについて

子宮頸がんの原因

子宮頸がんの主な原因はヒトパピローマウイルス(HPV)です。
HPVは皮膚や粘膜に感染するウイルスで、170種類以上の型が存在します。
そのうち一部が「高リスク型HPV」として、子宮頸がんの発生に関与します。

  • HPV16型
  • HPV18型
  • は特に発がんとの関連が強いことが知られています。

HPV感染と発がんの関係

HPV感染は非常に一般的で、性交経験のある女性の70~80%が一度は感染するといわれています。
ただし、HPVに感染しても必ずがんになるわけではありません。

  • 約90%は自然に排除される
  • 一部で持続感染すると
    → 数年〜十数年かけて前がん病変を経てがんへ進行

だからこそ、定期検診が重要です。

子宮頸がん予防について

子宮頸がんができる場所

子宮頸がんの多くは、子宮の「ある特定の場所」に発生します。
それはS-C junction(扁平上皮と円柱上皮の境目)
この部分は「細胞の入れ替わり」が活発な場所であり、がんが発生しやすい部位です。
そのため、正確な部位から適切に細胞を採取することが重要です。

子宮頸がんができる場所

子宮頸がん検診の有効性

日本のガイドラインでは、子宮頸がん検診は有効性が確認されています。

推奨されている検査

  • 細胞診(従来法)
  • 液状化検体細胞診(LBC)

いずれも死亡率減少効果が確認されています。
一方で、

  • HPV検査単独
  • HPV検査と細胞診の併用

については、死亡率減少効果の十分な証拠はまだ確立していません(対策型検診としては慎重な立場)。

自己採取と医師採取の違い

研究では

  • 自己採取→不適正検体や偽陰性が多い
  • 医師による直視下採取 → 不適正検体なし、偽陰性なし

という結果が報告されています。
子宮頸がん検診は医師が直接確認しながら採取することが最も正確です

細胞診の歴史

子宮頸がん検診の基礎となる「パパニコロウ染色」は、George Nicholas Papanikolaou により確立されました。
現在でも世界標準の染色法として使われています。

パパニコロウ染色

扁平上皮は内膜細胞と同じく、分化度はホルモンによって支配されています。

表層細胞(=エストロゲン優位)
表層細胞(=エストロゲン優位)
  • 増殖期(エストロゲン優位)に増加
  • 分化が進み角化傾向
  • オレンジ好性(好酸性)
  • 核は小さく濃縮(ピクノーシス)
中層細胞(=排卵後〜分泌期)
 中層細胞(=排卵後〜分泌期)
  • 排卵後に増加
  • 分化は中等度で停止
  • ライトグリーンに染色
  • 核は比較的大きく、クロマチンは細かい
  • グリコーゲンを多く含む
    → デーデルライン桿菌増殖 → 腟内は酸性へ
傍基底細胞(=低エストロゲン状態)
傍基底細胞(=低エストロゲン状態)
  • エストロゲン低下時に出現
  • 分化が未熟
  • 核が大きく細胞質が少ない
  • 刺激に弱い(萎縮像)

当院の子宮頸がん検診

当院では

  • 適切な部位からの正確な細胞採取
  • 痛みに配慮した診察
  • 必要に応じた迅速な精密検査

を行っています。

このような方に検診をおすすめします

  • 20歳以上の方
  • 性交経験のある方
  • しばらく検診を受けていない方
  • 不正出血がある方

コルポスコピー下組織生検

細胞診で異常が疑われた場合、コルポスコピー検査を行います。
子宮頸部を拡大観察し、病変部から組織を採取することで正確な診断が可能になります。
子宮頸部の細胞は直径約10~60μm程度と非常に小さく、子宮頸がん検診(=細胞診)は、子宮頸部を擦過(こする)して採取した「細胞の一部」を観察することで、「組織(=細胞の集まり)」の状態を推測する検査です。
そのため、細胞診はあくまで「スクリーニング検査(ふるい分け)」であり、この段階では確定診断はついていません。

確定診断を行うためには、コルポスコピー下で病変部を直接確認し、組織を採取して調べる「組織生検」が重要となります。

軽度子宮頸部異形成 中等度子宮頸部異形成 高度子宮頸部異形成

子宮頸部異形成(CIN)とは

HPV感染により細胞に異常が生じた状態を上皮内腫瘍(CIN)といいます。

  • 軽度 → 自然消失が多い
  • 中等度・高度 → 前がん病変

高度病変は、がんに進行する可能性があるため治療が必要です。

コルポスコピー下組織生検の結果ごとの当院の方針

1. 所見なし(Negative for dysplasia)

検査
  • HPV検査(ハイリスク型)
  • 細胞診
対応
  • 1年後に細胞診でフォローいたします

2. CIN1(軽度異形成)

特徴
  • 多くが自然消退(特に若年)
検査
  • HPV検査(持続感染の確認)
対応
  • 原則:経過観察
    • 1年後:HPV+細胞診
  • 以下の場合は介入検討:
    • 2年以上持続
    • HPV高リスク型持続(特に16/18)
    • コルポで高度病変疑い
治療(必要時)
  • 子宮頸部CO2レーザー蒸散術
  • 円錐切除は通常不要

3. CIN2(中等度異形成)

ポイント
  • 管理が分かれる(年齢・妊娠希望で調整)
検査
  • HPV型判定(16/18重要)
  • コルポ評価の質(TZ可視性)
対応
■若年(特に30歳未満)・妊娠希望あり
  • 経過観察可能
    • 6か月ごと:細胞診+コルポ+HPV
    • 2年以内に改善なければ治療
■上記以外
  • 治療推奨
治療
  • 子宮頸部CO2レーザー蒸散術
  • 子宮頸部円錐切除術(LEEP / コールドナイフ)
フォロー
  • 術後1か月、3カ月、6か月:細胞診
  • 6カ月目で陰性なら1年毎の定期フォロー

4. CIN3(高度異形成)

特徴
  • 高い癌化リスク
検査
  • HPV検査(ほぼ陽性)
  • 病変範囲評価
対応
  • 原則:治療必須
治療
  • 子宮頸部円錐切除術
  • 子宮頸部CO2レーザー蒸散術(診察の結果、施行をお勧めしない場合もあります。)
フォロー
  • 術後1か月、3カ月、6か月:細胞診
  • 6カ月目で、陰性なら1年毎の細胞診での定期フォロー

5. 上皮内癌(CIS)

特徴
  • 子宮頸がんの前段階(浸潤なし)
対応
  • 確実な切除が必要 (連携する医療機関へご紹介します。)
治療
  • 円錐切除術(基本)
  • 妊娠希望なし・年齢高め:単純子宮全摘も検討

6. 浸潤癌

検査(進行度評価)
  • MRI
  • CT / PET-CT
  • 腫瘍マーカー(SCCなど)
対応
  • 確実な切除が必要 (連携する医療機関へご紹介します。)
治療
  • 妊娠希望なし:子宮全摘も検討
  • 妊娠希望あり・年齢高め:子宮頸がんのエキスパートである東邦大学医療センター大橋病院産婦人科田中京子先生をご紹介いたしますので治療方法はご相談ください。(広汎子宮頸部摘出術を含む)

当院ではHPVワクチン接種にも力を入れています。

WHOが掲げる子宮頸がん撲滅

2030年までの介入目標

90%

15歳までに既定のHPVワクチン接種を受けること
(1)9歳以上~15歳未満の女性
→公費による9価ワクチン接種を
(2)9歳以上~15歳未満の男性
→公費による4価ワクチン接種を
強く推奨しています。

70%

35歳と45歳のときに確実性の高い頸がん検診を受けること
(1)コルポスコピー検査(精密検査)を併用し、正確な診断をいたします。
(2)前がん病変に対して、CO2レーザー蒸散術もご提案可能です。
(※CO2レーザー蒸散術は局所麻酔・日帰り・低侵襲な手術となります。)

90%

90% 子宮頸がんと診断された人が、適切な治療を受けること
(1)婦人科腫瘍専門医として、責任を持って適切な治療方針を提示致します。
(2)連携するがん専門施設へのご紹介をいたします。
(3)治療後のフォローアップも丁寧にいたします。

すべての国での頸がん罹患率が4/10万人より少なくなる
子宮頸がんのない世界

World Health Organization : Global strategy to accelerate the elimination of cervical cancer as a public health problem.2020

WHOが掲げる90-70-90目標

  • 90%:15歳までのHPVワクチン接種
  • 70%:35歳・45歳での確実な頸がん検診
  • 90%:診断された方が適切な治療を受けること

当院にできること

  • ワクチン接種
  • コルポスコピーによる精密検査
  • CO2レーザー蒸散術の提示
  • 専門施設への紹介
  • 治療後のフォローアップ
【図:子宮頸がん予防には、HPVワクチン接種と子宮頸がん検診が重要です】
図:子宮頸がん予防には、HPVワクチン接種と子宮頸がん検診が重要です
【図:ワクチン接種時の痛みに関する保護者さまのご懸念】
図:ワクチン接種時の痛みに関する保護者さまのご懸念
【図:筋肉内接種で痛みを軽減】
図:筋肉内接種で痛みを軽減

【図:緊張が強い(予防接種ストレス反応のリスクがある)患者さんへの対応】

急性ストレス反応のリスクがある人への対応
  • 信頼できる家族や友人など身近な人を同席させる(ただし身近な人が不安や恐怖を抱いている場合を除く)
  • 注射に対する恐怖心が特に強い人は、他人と一緒に接種の順番を待たせずに診察の一番に、他の被接種者とは別に接種する
  • このような方策により他の被接種者に恐れが伝播することを防げる
血管迷走神経反射のリスクがある人への対応
  • 座位もしくは仰臥位で接種する
  • 筋緊張法を活用する
  • 接種後15~30分間は座らせて様子をみる
  • 仰臥位で接種を受けた人に対しては、血管迷走神経反射がない場合にのみ起き上がらせる
筋緊張法
  1. 接種しない方の手でボールを握ったり、脚や腹部に力をいれるなどして、大きな筋肉を緊張させる
  2. 15~30秒間、顔が温まるもしくは赤くなるまでその緊張を維持する
  3. 15~30秒間、その緊張を解く
  4. 接種前、接種中、および接種後にわたり、緊張と弛緩のサイクルを繰り返す
日本産婦人科医会 監修/ヒトNo16型感染のケア

ご相談ください

子宮頸がん検診は、前がん病変の段階で異常を見つけ、適切な対応につなげられる可能性がある大切な検査です。
「しばらく検診を受けていない」「結果の見方が分からない」「精密検査が必要と言われた」など、どの段階でも構いません。
気になることがありましたら、どうぞお気軽にご相談ください。

子宮頸がん以外の婦人科がん(子宮体がん・卵巣がん)についても知りたい方は、下記ページをご覧ください。